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岡倉天心と文化財

こんにちは。
水戸市にありますヘアサロン、デルフォニカのミヤモトです。

最近、朝晩がだいぶ冷えてきました。
ちょっと寒いですが、昼は空が高く、夜空は星や月がとてもきれいに見えるのでこの季節は好きです。
今月の下旬に太陽に最接近するアイソン彗星は予想では肉眼でも見られる大彗星とされ、観察イベントが各地で予定されているようですね。
僕もその日はしっかり防寒して観察してみようと思います。


さて、こないだの休みは北茨城にある天心記念五浦美術館へいってきました。
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「岡倉天心と文化財」
日本の近大美術の発展に大きく貢献した岡倉天心。
今回はその数ある偉業の内のひとつ
明治の初めに起きた廃仏毀釈によって破壊された仏像など日本の古美術品の保護にスポットをあてた展覧会でした。
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京都・平等院の国宝 《雲中供養菩薩像 南14号》
楽器を弾きながら空を飛ぶ菩薩さま。か、かっこいい。
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《薬師如来坐像》平安時代
この薬師如来像の周りにたくさん浮かんでいる仏さまの内の一体が僕にそっくりでした。いやすいません、僕が似てるんですね。ほんとに光栄なことです。一緒に行った友人も「すごい、そっくり」と笑ってました。ほんとありがたいです。是非さがしてみてください(笑)


今回は仏像そのものというよりも、古美術品の修復、保護に奔走した人々の裏側のエピソードとともに仏像を鑑賞する趣旨でした。
図解の修理報告書と仏像を見比べて、どこをどのように修理したのかがわかってとても面白かったです。

今回一番の収穫というか、ぼくがとてもうれしくなってしまったのは、日本人は技術力だけでなく、センスもすごいんだなということを改めて思えたことでした。
仏像もやはりモノですから、経年劣化でいろいろ朽ちた感じになってしまうんですが、その自然なエイジングを生かした修復っていうんですかね、絶妙なところで止めてあるわけです。そこがすごいところだと思いました。
東南アジアの仏像などは、かなり古くても金ぴかに修復してあったりして個人的にはけっこういけいけな印象を受けるんですが、日本の仏像はあくまでオリジナルを忠実に再現し過度な修復をしないとても繊細な仕事をしていて、そういうところにいわゆる「わび・さび」のような美意識があらわれたりしてるのかなと思いました。

仏教の真髄の一つである「無常」というものを美術的な表現であらわすとすれば、日本の仏像や寺院の右に出るものはないのではないでしょうか。

これらの大仕事を引き受け大成功させた岡倉天心はやはりとてつもなくすごい人です。
そんな天心の偉業の一つを知るための貴重な資料としておすすめの展覧会です。
美術館の近くには彼が晩年すごした旧天心邸、美しい五浦の海岸に建つ六角堂など見どころ満載です。
皆さんも是非行ってみて下さい。

http://www.tenshin.museum.ibk.ed.jp/02_tenrankai/01_kikaku.html

今日の一冊
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茶の本 (岩波文庫) [文庫]
岡倉 覚三著
村岡 博訳

なんとオリジナルは「The Book of Tea 」として英語で書かれています。
英語のできる人はペーパーバックも出ていますのでそちらのほうがいいと思いますが、こちらの岩波文庫版は気軽に読めておすすめです。

久々に天心の書いた「茶の本」を読み返してみたくなりました。
この本の中にも彼の独特の感性と鋭い洞察力を垣間見ることができる言葉がたくさんありますのでいくつか紹介してみたいと思います。

■西洋人は、日本が平和のおだやかな技芸に耽っていたとき、日本を野蛮国とみなしていたものである。だが、日本が満州の戦場で大殺戮を犯しはじめて以来、文明国とよんでいる。

■茶は衛生学であって経済学である。茶はもともと「生の術」であって、「変装した道教」である。

■花は星の涙滴である。つまり花は得心であって、世界観なのである。

■茶の湯は即興劇である。そこには無始と無終ばかりが流れている 。

■われわれは「不完全」に対する真摯な瞑想をつづけているものたちなのである。

ちょっとシュールに響いたり難解に感じるところもあるかもしれませんが、言葉の意味を頭で「考える」というより、なんていうか身体全体で「感じて」みるように読み進めると天心の言葉がふっと入ってくるような気がします。
インドの詩人であり思想家であるタゴールとも親交があったようで、彼らは六角堂のなかで五浦の波の音を聴きながら瞑想をしたり詩の朗読をしたそうです。
なるほど!そうか、この本はとても瞑想的なのかもしれません。
とても薄い本なので読みやすく、天心の思想を「感じる」ことができる本としておすすめの一冊です。

そういえば岡倉天心は最近「天心」として映画にもなりましたね。
機会があればぜひそちらも観て見ようと思います。