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海か、山か、芸術か?

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こんにちは、デルフォニカのミヤモトです。

さて、芸術の秋ということでこないだ、現在茨城県の北部の各地で様々なアーティストの作品展示が行われている「KENPOKU ART 2016 茨城県北芸術祭」の一部を見てきました。

とは言っても一日ですべてを見るのは不可能ですので、ある程度地域と自分が見たいアーティストに的を絞って巡ってみました。

まずは水戸の芸術館の現代美術ギャラリーで開催されているクリスト&ジャンヌ=クロードの「アンブレラ 日本=アメリカ合衆国 1984-91」を観てきました。
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1991年10月、日本の茨城県とアメリカのカリフォルニア州の谷間地域で3,100本の巨大な傘をいっせいに開くというプロジェクト「アンブレラ、日本−アメリカ合衆国、1984-91」があったそうで日本では茨城県の常陸太田市から里美村にかけての国道沿い、全長19キロメートルの地域に1,340本の青い傘、カリフォルニア州南部のカーン郡からロサンゼルス郡にかけてのハイウェイ沿い、全長29キロメートルの地域に1,760本の黄色い傘が設置されたそうです。
そのときの構想のドローイングや実際に設置された支柱の長さが6メートル、正八角形の傘布の対角線の長さがおよそ8メートル半の巨大な傘などの展示などがあり、とても興味深いものでした。
たまたま今日来店されたお客様が小学生の時に、このプロジェクトに参加したことを知りとてもびっくりしました。
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和田永さんの「日立電輪塔」

ブラウン管テレビから発せられる電磁波のノイズをラジオが受信して、テレビの明滅と同期した音が鳴り響きます。近づいたり遠ざかったり、ラジオの種類を変えたり、チューニング・ダイヤルを回したりしながら、様々な音色を鳴らすことができます。電輪塔の先端には、象徴的に日立製のカラーテレビが祀られています。だれでも簡単にノイズアーティストになることができます。

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テア・マキパー 「ノアのバス」
日立駅からシビックセンターへ行く途中、広場の外側に置かれたバスの中では、ウサギ、ロシアンリクガメ、モルモット、レースポーリッシュ(鳥)が暮らしています。植栽されているのは、日立市に自生する植物です。都市空間の中に突如として出現した動物・植物たちの空間は、私たちに自然との共生のあり方を考えさせます。

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中崎透「看板屋なかざき」

茨城県出身の中崎透は、県北地域を幼少期に親しんだ14の地名で記憶していると言います。そこで県北芸術祭では、市町村の統廃合により消えてしまった、美和、水府、里美、金砂郷などの県北の地名地域を看板にしたインスタレーションを展開。昔から親しまれてきた土地の記憶を人々の心に蘇らせます。

この看板の位置と実際の地図上の位置関係もちゃんと合わせてあるのもおもしろいですね!

今度はイリヤ&エミリア・カバコフやチームラボの作品がある高萩、五浦、そして大子などにも足をのばしてみようと思っています。

是非皆さんも県北芸術祭に足を運んでみてはいかがでしょうか?

http://kenpoku-art.jp/

ルーシー・リー展行ってきました。

こんにちは、デルフォニカのミヤモトです。

こないだ茨城県陶芸美術館へルーシー・リー展を観に行ってきました。

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茨城県陶芸美術館は丘の上にあります。
周辺は緑がいっぱいで周りを歩いているだけで気持ちが良いです。
この日も小学生ぐらいの子供たちがたくさんピクニックしていました。

20世紀を代表する陶芸家、ルーシー・リーの没後20年の展覧会は
初期 - ウィーン時代 (1921-38年)
形成期 - ロンドン時代
円熟期
の三つの展示構成になっていて、作品もその時代によって変化しています。
ルーシーリーの作品の魅力は、まずなんといってもフォルムの美しさとテクスチャー、そしてカラフルな色使いですね。
時代によってそれぞれの良さがありますが、僕は特に初期のカラフルでポップな色使いと溶岩が固まったようなごつごつしたテクスチャー、そしてロンドン時代の洗練された花器のフォルム,
そして円熟期の掻き落しという縄文土器からヒントを得た模様使いなどがすばらしく気に入りました。
ほかにも生活の為に製作した陶器でできたボタンなどもたくさん展示してあり、イッセイミヤケ氏がそれらをコレクションしていたという興味深い説明もありました。

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展示を観終えて、敷地内にあるカフェで一息。
丘の上は心地よい風が吹いていて、笠間の山々を眺めながらゆっくりと珈琲を楽しむことができます。

水戸から車で3~40分程で行けるのに、ちょっと遠くまで足をのばしたように感じることができます。
陶芸品を見るのも良いですし、丘の上を散歩したりピクニックするのもとても楽しいものです。
是非みなさんも出かけてみてはいかがでしょうか。


茨城県陶芸美術館開館15周年記念展
没後20年 ルーシー・リー展
平成27年4月11日(土曜日)~6月21日(日曜日)

ヂョン・ヨンドゥ 地上の道のように

こんにちは。DELFONICAミヤモトです。

こないだ、水戸芸術館現代美術ギャラリーで開催中の「ヂョン・ヨンドゥ 地上の道のように」 を見てきました。

【見どころ】
1. 初期作品から最新作、写真から最新の映像デバイスを使ったメディアアートまで、ヂョン・ヨンドゥの作品を一挙に公開。
2. まるで映画の中の登場人物になったかのような感覚を味わえる、体験型映像インスタレーション作品〈ドライブ・イン・シアター〉の展示。
3. 3D映像によるバーチャルリアリティ体験ができる話題のヘッドセットモニター、オキュラスリフトを使用した新作の展示。
4. 国際的なマジック大会で優勝し、ラスベガスなど世界各地で高い評価を得ているイリュージョンアーティスト、イ・ウンギョルやジャズピアニストの小曽根真が出演する水戸の市街地を舞台とした新作映像作品の展示。
<水戸芸術館のHPより一部抜粋>

3D映像によるバーチャルリアリティ体験ができる部屋では、ヘッドモニターをつけて綺麗な自然の中を歩くバーチャルな体験をするのですが、実際に歩いているのは両側がガラクタやゴミが積まれた小道です。
不思議なものでほんの四~五分もその状態でいるとモニターで見ているバーチャルな森の世界に慣れてしまい、ヘッドセットを外した時に見える現実(ゴミの中)のギャップに戸惑ってしまいました。

このインスタレーション作品は「ブラインド・パースペクティブ」というのですが、ブラインドとは「見えない」という意味のほかに「合理的な理由もなく物事を信じる」という意味もあるそうです。

案外、ヒトはありのままを見ているようでいて、見たいものだけを見る傾向にあるのではないでしょうか。
テクノロジーが進化するとその傾向がもっと顕著になるかもしれません。

現代美術に非現実感を求めて行く方も多いことでしょう。しかし実際にはこの非現実感も現実の一部なのです。目は見えているのに見えるものを信じるあまり盲目のようになってしまった僕の心の目をいちどリセットするためにもとてもいい機会になったと思います。

ヂョン・ヨンドゥ 地上の道のように
水戸芸術館現代美術ギャラリー
2/1まで

拡張するファッション

みなさんこんにちは。
水戸市にありますヘアサロン、デルフォニカのミヤモトです。

こないだの休みに、水戸芸術館の現代美術ギャラリーで現在開催中の企画展「拡張するファッション」を観てきました。


「ファッションは季節ごとに最新の流行情報を与えるシステムだ――これまで多くの人に、ファッションはそう受け止められてきた。新作コレクションや流行情報の量が圧倒的なあまり、人々はそこに自分の思考を挟むことを、機械的に阻止してしまってきたのかもしれない。でも実は、ファッションを入口にして、さまざまなことを語ることができる。」
(林央子著『拡張するファッション』より)

皆さんはファッションと聞くと、どういう印象を持たれるでしょうか?
ある人は、最新の流行に乗り遅れないように必死になって追いかけるものだと思う人もいるかもしれませんし、ある人は人間に重要なのは中身であって外見を着飾ることにはまったく興味がないと思う人もいるかもしれません。
あなたはどうですか?

1990年代までファッションは自分自身の生き方や考えを他者と共感するために必要なツールとして大きな役割を果たしてきました。
僕自身、ファッションを通じて、音楽やアート、さらにはカウンターカルチャーから哲学まで、間接的にいろいろなことを知るきっかけとなりました。
後にインターネットが急速に普及してきて、それまでファッションが担ってきた役割を、自宅のベッドルームでいとも簡単にウィキペディアやSNSがその役割を果たせてしまったので、ファッションそのものに対する価値観が時代と共に大きくかわった印象を持ちました。
もちろんそれ自体は自然なことですし、僕もそんな時代の波にいつの間にか飲まれていたつもりでしたが、久しぶりにホンマタカシさんのドキュメンタリー風のファッション写真を見た瞬間、ティーンエイジャーの頃に感じた、ファッションを通じて世の中に何か発信してやるぜ‼︎、といった強く能動的な感覚が瞬間的にフラッシュバックしたのでした。

ここには、冒頭であなたがもっていたファッションという概念をことごとく覆すようななにかがあるかもしれません。
もしかしたらファッションとはただの言葉であり、世界を知るために拡張していく単なるトリガーのひとつに過ぎないのかもしれません。

拡張するファッション
会期:2014年2月22日(土)~5月18日(日)
会場:水戸芸術館現代美術ギャラリー

水戸芸術館に行ってきましたー

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みなさんこんにちは。
水戸市にありますヘアサロンDELFONICAのミヤモトです。

今日は休みだったので、友人からもらったチケットで水戸芸術館の現代美術ギャラリーで開催されている『坂 茂 建築の考え方と作り方』を見に行ってきました。

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行動する建築家、坂茂さんの初の大型個展となる今回の展覧会ということで建築物好きの僕としては行く前からとても楽しみにしていました。

入るとすぐに紙でできたミニマムな茶室があり、掴みはOK、いきなり琴線に触れた感じでワクワクしてしまいました。
今回とくに事前の情報収集はせずに行ったのですが、フランスの美術館『ポンピドゥーセンター・メス』の柱脚の模型や建設風景、東日本大震災で多大な被害のあった宮城県女川町の被災者の為に建てられたコンテナ仮設住宅『女川町仮設住宅』の実寸模型など、以前どこかで目にして気になっていたこれら二つの建物がどちらも坂さんの設計によるものだったのはちょっと驚きでした。
この二つの建物、建てられた目的も規模もそして見た目の印象もまるで違うのに何故か惹かれる共通点があるように感じるのです。一体その共通点とは何だろう?と考えながらみていたときに、彼の他の作品にも言えることだと思うのですが、なにかある種の『日本人的な感覚』が滲みでていることに気がつきました。
それはどういう感覚かというと、彼の作品にはいい意味での『軽さ』があると思うのです。
日本の建築は昔から家の中と外との境界を曖昧にする縁側や土間などがあり、
移り行く四季を楽しんだりする感覚があると思います。
対して欧米の建築物などはわりと外界と内側の世界をはっきりと区切って、住まいをシェルターのように機能させているような印象を個人的には受けます。
この対照的な二つの感覚の違いがなんとなく僕の思う日本人のもつ軽さなのかなと思いました。
この軽さは使う素材にもあらわれていて、日本の建造物には昔から木や紙などが積極的に使われてきました。これらの素材は生産も加工も取り替えも比較的簡単でリフィルとしては最適だと思います。障子や襖や畳などがまさにそれらの代表で、調湿機能などにも優れているし、外側と内側との程よい距離感のバランス、また隣室にいる人の気配などを感じて配慮するといった『空気を読む』というのでしょうか、そういう独特の感覚もこれら日本建築の中で育まれて行ったものなのかなと思いました。

僕がよく日本人で良かったなと思うのは、こういう「これでいいじゃん」っていう必要最低限のそれ以上求めないでいられる感覚というのでしょうか、「良い塩梅」とか「足るを知る」などという言葉がありますが、そういう感覚をわりと皆共通の感覚として持ち合わせているんじゃないかなという気がすることがたまにあるからです。(実際にそれを常に実行できているかどうかは別として)


今回とくにおもしろいと感じたのは、彼は災害支援プロジェクト活動をしていて難民キャンプ用のシェルターや災害支援の仮設住宅なども積極的につくっているのですが、仮設故の軽さというデメリットを逆手に取ってその軽さを楽しんでしまうような印象を受けたことです。

3.11で信じられないような悲劇を経験しても、それでもなんとか乗り越え前向きに生きて行ける被災地の方々の強さの秘密は、そういった日本人のもつ軽さの感覚のようなものも無関係ではないのかな?とこの展覧会を通して思いました。

ひとそれぞれ作品から受ける印象は違うと思います。
とくに何も考えずにみても、建築にさほど興味がなくても坂さんの作る
建築の幾何学的な構造の美しさなどは一見の価値あると思います。
是非近くにお住まいの方は水戸芸術館に足を運んでみてはいかがでしょうか。

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